
さて、舞台の立込だ。ホールはこれから菜の花座の公演まで使用予定がない、ということなので、特別にお許しをいただいて、1週間前に立て込みさせていただくことにした。床一面に黒パンチを敷き詰め、上手奥に1尺4寸高の座敷をしつらえる、これだけのことだ。後は、移動用の三角柱を設置するだけ、そいつはいつだってできる。ここまで終わらせておくと、土曜日の仕込みが照明から入ることができ、その後のリハーサル、ゲネプロがゆとりを持って進めることができる。舞台を使った稽古ができれば、それに越したことはないが、そには使用料がかかる。1週間借り切る財力は菜の花座にはない。あくまで、土曜の仕込みをスムーズに進めるためだけの事前仕込みだ。だから、三角柱作りは中途半端でも、舞台設営の方は済ませておきたかった。
パンチ敷きは手慣れたもの、さっさかと済んだ。座敷の設営にかかる。今回の芝居は2つの家族が交互に登場する。離婚した夫と末娘の仙頭家、元妻と長女と祖父、3人暮らしの笈掛家、ただし、妻はすでに亡い。この二つの場面を交代で登場させるとすると、簡単なのは、上手と下手にそれぞれの居間を当てることだ。でも、こうすると、観客は常に顔を右に左にねじって舞台を見続けることになる。これは苦痛だし、不自然だ。もう一つの方法はセンター空間に装置や道具を、その都度とっかえひっかえして、両家を作りわけるやり方だ。しかし、これには相当数の手慣れた裏方が必要だし、それ以前にパネル等製作を大々的に行わねばならない。これ、今の菜の花座には絶対、無理!だからって、装置も道具も一切なし、なんてのも、あまりに手抜き過ぎて、役者は超絶演技を要求されるだろう。
ということで、上手奥の座敷を斜めに切ることで、極力中央に近づけ、下手もその切り取った部分の前までを演技エリアにすることで解決しようとしている。って、読んだってわからないよね。ぜひ、見てください、本番『不幸せくらべ』12月20日14時開演。要するに、台上を斜めに切った、ってことが言いたいんだ。舞台作りに参加したことのない人には、へえーだからどうした?ってことだろうけど、この斜めの線を出すてのは、なかなかに難しい。平台ってやつが長方形または正方形でできているからだ。これを前後にずらして斜めを出すわけだが、当然、ずらした部分は三角のスペースになる。これを埋めるため、あぶらげと呼ぶ特殊な平台を置いている会館もあるが、プラザにはない。以前、『Goodnight Baby』でこの斜め切り舞台がやりたくて自作したあぶらげがあるので、それを使うことにして舞台図を書き上げた。
3尺×6尺の平台を3尺ずつずらしつつ、4列に組んで座敷平面を作った。さっ、自作三角あぶらげを持って来よう。2階の道具置き場から、狭い階段をやっこらさと運んで、はめ込んで見て、驚いた!な、な、なんと!1辺4尺じゃないか!!だ、だ、ダメだ!や、や、やり直し、組み直し!ごめん!心の中で手を合わせ、土下座しつつ、現実は平然と団員にお願いし、4尺×6尺の平台に交換した。幸い奥行きが3尺×4で12尺だったので、4尺×3で同じ広さを作ることができた。まずは良かった。さて、今度は三角あぶらげ、ぴたっと収まるはずぅぅぅぅ、やややややっや!なんと、1辺4尺より10cmほど長いじゅないか!だはっ!こりゃいかん!はみ出してる。
もう、事前にしっかり確認しておかないからだ!ほんとう適当なんだから。緻密さゼロ!計画性皆無!がさつな自分がほんと、恨めしい!しかし、しかし、そんなことは、表に出さない!予定を大幅に超過して疲労色濃いメンバーの顔に、さらに不安と不信が広がっている。どうにかせにゃならん!なんとしても、この窮地を脱出せねばならん。
まっ、このはみ出した部分は仕込みの日に、適当にふさごう、といかにも大したこと無いように言い流して、その変形台上のパンチ敷きを指示。これまた難題にぶち当たった。パンチも長方形が基本、斜め切りになっているものなどない。これはわかっていた。じゃどうする?まっ、なんとかなるさ!いい加減!適当!
半端なパンチその他を取り出して、様々あてがってみたが、帯に短し襷に長し、どれも上手く行かない。ええい、3尺の長いパンチを端から敷いて、余った部分は下に落とす。パンチも含めてケコミで隠す。おっ!なんと、三角あぶらげのはみ出し部分もそれで隠せるじゃないか!いいいね、いいね!これでごまかせた!結局、一カ所だけ、はみ出しは残ったが、これは後日小さいケコミを作ってカバーすることにして、完成!ふー!
こうやって、行き当たりばったりで窮地を脱してきた、それが僕の演劇人生だったなぁ!ごまかして、適当に辻褄合わせて、なんとかその場をしのぐ。良くない!ぜったい、良くない!そんな半端仕事してるから、大きな仕事できないんだ!わかってる。でも、これはこれで、現場じゃ役に立つ大切な能力なんじゃないか?なーんて、また、自分を甘やかす!